【World of Destruction】
□終幕
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Act.3
【英雄達が選ぶ道】
「…ここは…何にもない場所だな」
…何もない草原
よく見ると、建物があったのか、不自然な瓦礫が見える
だが、その瓦礫も風化が酷く、単なる岩と見られてもおかしくはなかった
「かつて、ノクターンという町がありましたの…」
【ノクターン】
その言葉を聞いた瞬間、ヒカルが胸が苦しくなった
初めて聞いたはずの言葉
だが、体はその言葉を理解しているようだ
「ノクターン?」
「ルフィーナ・ラ・フェルステッドが生まれた町ですわ」
「…まさか…」
「そう。私を含む、ルフィーナの血筋としてのフェルステッド家とティアマットに纏わる因縁はここから始まりましたのよ」
ここが【はじまりの地】があった場所
ティアマットとフェルステッド家の因縁
………そして、その因縁があったからこそ、生まれた【高城家】
アルトリアとヒカルにとっての、はじまりの場所である
…だとしたら、少なくとも数百年前の場所だ
建物が風化してもおかしくはない
「…クスィフィアスという遥か昔の一族の怨念もありましたが、私が受け継いだ怨念はここから生まれましたのよ」
「怨念ってな…」
「…十代目から十五代目の五世代分も続きましたのよ?怨念で問題ありませんわ」
……確かに、ティアマットに纏わる因縁はルフィーナの時代から始まり
彼女が残した三人の子供、更にセティとその子供
そして、アルトリアの世代までの数百年続いたのだ、怨念と思われても仕方がない。
……実のところ、彼女は十六代目で怨念は六世代分なのだが、セティの時にいろいろあったらしく、一世代分減ってしまったようだ
「…ルフィーナには、誰よりも信頼できる存在がいたと聞いています」
「それがアクアリウスさんだろ?」
「今はそうかもしれませんわね。でも、当時のアクアリウスはあのクスィフィアスやティアマットと肩を並べる悪党でしたのよ?」
「あ、そうか…じゃあ、アクアリウスさんの他にもう一人いたってことか」
ヒカルには誰のことか、察しがついていた
ルフィーナが身内以外に親しく話をしているのは竜二匹と人間が一人
このうち、前者の竜は除外される。話に出ているティアマットとアクアリウスだからだ
……当時の二匹の悪評は酷いものだったと聞いている
(大方、あのワルツって人だろうな。あの人、普段はへらへら笑いながら子孫のロンドをからかったり、ダメなご先祖様を装ってるけど…)
(ルフィーナさんの話になると、人が変わったように目付きが鋭くなるからな…)
(それに…彼女がティアマットの傀儡から解放された時、ずっと傍にいたのは彼女の祖父母でもアクアリウスさんでもない、彼だ)
(身内でもなく、長年面倒を見た親友でもなく、ただの友人を傍に置き続けることを彼女の祖父母達が認めるか…何も言わないのは、既に認められているからだろう)